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初夢 第三部

2007年01月05日 20:36

おしべの呪いはそれからも続いた。
けれども孤島で起こった事件以降、種たちをひとところに集めるということは行わなくなった。そのかわりに、見つけたと同時に殺していった。殺すと同時に呪いは強くなっていったけれど、それよりも呪いが怖かったのだ。

あるところに、一人の男教師がいた。先生はある日、校長に呼び出され、君の恋人を今日処刑するよと告げられた。
先生は激怒した。
「もう、人間のふりなどしてやるものか」
そう言って、五階の窓から飛び降りた。唖然とする校長を尻目に、先生はものすごい速さで恋人のもとへと走っていった。その速度も常人のものではなく、人々は怖くなった。
自分達は何か他の呪いを見落としていたのではないか?災厄は、大災厄となってまたも繰り返されるのだろうか?
すべての交通機関を停止して、軍を動かした。
先生は、河を飛び越え、湖を泳ぎ、軍隊を蹴散らした。
やがて恋人に出会うと、抱きしめて打ち明けた。
「僕はね、おしべの子孫なんだよ。君がめしべの子孫であるように、僕は、僕の一族は他の人間と違うことをひたかくしにしてきたんだ」
恋人は驚いた。おしべの子孫など、聴いたこともなかったから。
「僕らの一族は、決してめしべの子孫に近づかないように言われてきた。不思議だね。僕らには、文様がなくたって君が子孫だってわかってた。でも、君が好きだよ。好きになってしまったんだよ」
「私も、あなたが好きよ」
二人は笑う。
雨は降らなかった。
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初夢 第二部

2007年01月04日 20:10

そこには一つの呪いがあった。
それはその国の少女だけが怯える呪いだ。男の人と一線を越えたとき、緑色の文様が体中に浮き出、それが一年間続くというもの。その緑の文様が浮き出ているとき、少女はかつてないほどに美しくなれる。しかし、その美しさとひきかえに倫理は失われ、妻のいる男を誘惑し、暴力を好む性格になってしまうのだった。
昔語りの老婆は伝える。かつてこの地にあったこと。おしべとめしべと呼ばれた姉妹たちの行く末を。老婆は、これはきっとおしべの呪いなのだと言った。
文様の浮き出た少女は種たち、と呼ばれ、海にぽっかりと浮かぶ孤島へと隔離された。この呪いはめしべの血を受け継ぐ子どもにだけ現れると考えられていた。しかし、姉妹の生きていたのはもう何百年も前のことで、自分にその血が受け継がれているのかどうか、少女たちにはわからないのであった。

一人の少女がいた。彼女は、一生をささげる恋人と出会ったばかりで、自分にめしべの血が流れているものかどうか、考えたこともなかった。
けれども、少女は愕然とする。恋人とはじめての朝を迎えたとき、カーテンを開ける自分の手に緑色の網目が浮き出ていたからだ。
「逃げよう」
振り返ると恋人が言った。
「あそこの孤島に閉じ込められて、帰ってきた女はいないっていう」
恋人の目はうるんでいた。「僕は君がいい。一年間、肌を隠せればいいんだ。呪いで起こる君の変化を、僕はきっと受け止めてみせるから」
少女は恋人に抱きとめられ、うなずいた。
けれど、その覚悟はすぐに打ち砕かれることになる。
少女が種であることはすぐにばれ、孤島へと送られることになった。
恋人は少女の送られる船へ隠れて乗り込み、島にいる種たちみんなを逃がそうと考えた。
しかしそれは甘かった。
呪いは、一人の少年の手に負えるものではなかったのだ。
閉じ込められていた種たちは何人も、何十人もいた。そしてその誰もが男を欲し、少年は子羊のように扱われた。
少女が恋人と出会うよりも先に、少年は何人もの種たちに犯された。それを知った少女は嘆き、嘆き、嘆き、怒った。
何百年前の災厄はかくあろう、と誰もが思った。
少女は大きな大きな植物へと変化して、孤島じゅうを取り囲み、種たちを一人残らず串刺しにした。
少年は眠りのふちで少女の声を聞いたように思った。
「ごめんなさい、ごめんなさい、愛してくれてありがとう、だから、どうか目を覚まさないで」
少年はにこりと笑おうとした。しかしできなかった。少年はなぶられた衝撃ですでに命を落としていたのだから。
そして、また、雨が降った。

初夢 第一部

2007年01月03日 20:09

『「めしべ」と「おしべ」が生まれる。おしべはこの家を破滅に導き、めしべは幸福を連れてくるだろう』
そんな予言があったのに、生まれてきた子どもは双子の姉妹だった。

姉はおとなしい優等生、妹は学校の成績はぱっとしないがかわいらしい女の子だった。妹はいつも笑い声とともにある。姉はそれがうらやましかった。
年頃になると、また、話は変わってくる。おとなしい姉は男の子には相手にされず、明るい妹ばかりがちやほやされた。姉がひそかに思いを寄せていた伯爵の一人息子も、妹のとりまきの一人になった。
姉は泣いた。けれどもすぐに立ち直った。だって、双子なんだから。顔は同じはず。むしろ、頭のいい自分のほうが、その気になれば男を惹きつけられるはずだ!
そうして、半年後には姉は妖艶なる美女へと変化していた。舞踏会に出るや男達に囲まれ、毎夜毎夜違う男を屋敷に連れ込んだ。
妹に勝った!、姉はにっこりと、男に微笑む。
けれども、実際は違った。
妹は姉が連れてくる男たちを品定めし、自分の好みの男だけを姉から奪っていったのだ。姉は一夜限りのつきあいを主としていたので、それに気づくことができなかったのだ。
姉は外から男を連れてくる。妹は屋敷にいながらにして男を選ぶことができる。どちらがおしべで、どちらがめしべなのかは、言わずと知れたことだった。
一族は姉を処刑しようとする。
処刑される間際、どうして、おしべが自分なのかを問い、その理由を知るや愕然とした。そして、激しい怒りに包まれ、その身を変化させていった。
赤いドレスからすらりと伸びた腕には、血管らしきものがびくびくと浮き出ていった。それは顔にまで及び、やがて破裂した。そこから、植物の茎のようなものが伸びていった。はじめは細く折れそうなほどだったそれは、やがて幹のように太くなり、屋敷中を覆っていく。
「姉さん!」
妹は叫ぶ。「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
妹は思っていた。姉の選ぶ男ならば間違いないだろうと思っていたと。
けれどそれを言葉にすることはかなわなかった。
もう、心臓を茎に貫かれていたから。
屋敷は茎の緑と、血の赤で埋め尽くされ、音が消えた。空から雨が降ってきた。

そのうしろすがたをみているわたしにきづくことなく

2006年09月05日 13:32

記憶を記録へと昇華する。
それが昇華であると思い込んで。
あなたを私から切り離す。
それが最善であると思い込んで。
プラシーボ・スパシーボ。
もう少しで空も泣ける。

とかげのしっぽ、しっぽ切り。
あなたよ どこまでも駆けてゆけ。
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懺悔室のない風景

2006年08月24日 23:37

 そこは大きな本屋だった。だからこそ、いろんな人がいるだろうと、いてもおかしくないだろうと、私は駅から出ると早足でそこに向かったのだった。

 本屋に着き、すぐ左側にあるエスカレータに乗った。
 エスカレータが下るに任せて、手すりを握り締めていると、顔のすぐ横を大きな鏡が通り過ぎていった。その中の自分と目が合い、私ははじめて客観的に自分の姿を見た。それは、よれよれで、こわれそうで、みじめな、人間だった。
 今にも泣きそうな眼をしていると思った。まだ泣いていないのになんでかなぁと思いつつ、一歩一歩足を進めていくうちに眼が熱くなって視界がゆがんできて、まだ、まだだめだ、まだ、と早足になって、人のいないところへ向かった。
 ぶわり、あふれてくるものを抑えきれずに私は目元をこすりながらうずくまり、酒に酔っている人のふりをした。
 ふと思いついて純文学の棚の前に陣取って、泣けそうな本をさがす。作者名も見ずに手に取った。
 本のページに染みを作らないことだけに気をつけて、あとは思う存分泣くことに専念した。

 声はあげない。
 顔も、できるだけくずさないようにして、ただ、息をつめて涙が流れるままにしておいた。
 声をあげたい。
 そう思うことで、また、一人なのだと思い知る。
 どうしても泣きたい。けれど、どうあがいても一人なのだという現実を、何度も何度もかみしめた。
 
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